里美 恥辱の訪問販売(1)

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「ピンポーン」

多忙な夫の急な出張を無事に送り出し、洗い物をしていた里美がインターホンを覗くと、そこにはにやついた知らない男の顔が映っていた。

「はい、どちらさまでしょう?」

「あ、奥さんですか?朝からすみません。ちょっと奥さんに見て頂きたいものがあるんですがね。」

男は名乗りもせず、茶色い封筒をちらつかせながらいきなり話を切り出した。里美はその様子に少しムッとした口調で聞き返した。

「どういったご用件でしょうか?営業かなにかでしたらけっこうです。」

「営業ねぇ…。まあ、あるものを買って頂きたいってのは確かですねぇ。奥さんなら間違いなく興味を持っていただけるものですよ。」

相変わらずにやついた顔を崩さず、ねちっこく話す男の姿はとてもまともな営業マンとは思えない。不躾な態度と物言いに苛立ちを隠せず、さっさと切り上げようとした。

「すみませんがうちはけっこうです。」

「まあそう仰らずに。奥さんのためでもあるんですよ。お話だけでも聞いていただけませんか?」

「いえ、けっこうです!」

「そうですか。では商品カタログをポストに入れておくので、興味がありましたらご連絡ください。早めに見た方が良いですよ。奥さんの身のためにもね。」

里美の強い口調に男は肩をすくめると、手にした封筒を振りながら意味深な言葉を残してその場を立ち去った。

(私の身のためにも…?)

男が意外とあっさりと引き下がったことにほっとしつつも、最後の言葉が妙に引っかかった。洗い物を手早く片付け、郵便受けから薄茶色の封筒を取り出す。得体の知れない不安を抱きながら開けてみると、中には縮小された写真が30枚ほど並んだカラー刷りのビラが入っていた。それを見た瞬間、里美の顔が真っ青になった。

(なによ、これ!)

それらの写真にはどれもあられもない格好をした裸の女が写っていた。いずれも正視に耐えがたいいやらしい姿を写したものばかりだ。そして、小さくて分かりにくいが、その女の顔は紛れもなく里美自身のものだった。

(どうして…なんでこれが…。)

それは結婚する前に付き合っていた彼氏が撮った写真だった。当時は結婚まで考えていた仲で、思い出作りと称して人には見せられないような写真も撮っていた。しかし彼氏が九州に転勤になり、寂しさに耐えかねた里美の方から別れを切り出した。その一年後に今の夫と出会い、今の結婚生活に至っている。

(カタログって…まさか全部持ってるの?なんであの男が…。)

写真を持つ手がわなわなと震える。まさか彼自身が…とも考えたが、穏やかな性格の彼が今さらこんな写真を持ち出すとは思えない。彼と別れた後、彼の手からどこかで漏れたとしか考えられない。

写真には、全裸で恥ずかしげにポーズをとったものから、四つん這いで彼の肉棒を口いっぱいに頬張ったもの、大きく開いた足の間で濡れた媚肉を晒したものもある。中には、人気のない屋外で裸身を晒したり、軽いSM気分で縛られた姿もあった。

(こんなものが他の人に見られたら…)

背筋を冷たい汗が流れる。優しい性格の夫ならきっと許してくれるだろう。だが職場や周りの人間に見られたら…。夫の職業柄ただでは済まないだろう。周りの冷たい視線の中で、間違いなく今と同じ生活はできなくなることは容易に想像できる。とにかくあの男に連絡をとらなければ…。里美は部屋に戻ると、写真の裏に殴り書きされた電話番号を押した。

「もしもし?」

「あの…高瀬です。」

「ああ、奥さん。早速のご連絡ありがとうございます。カタログをご覧いただいたんですね?写真はいかがでしたか?」

焦らされるような呼び出し音がしばらく続いたあと、ようやく繋がった電話の向こうから、先ほどの男の声が聞こえた。妙に慇懃なねちっこい話し方に生理的に虫酸が走る。

「非常に魅力的な商品が盛りだくさんでしょう?カタログじゃ分かりませんが、乳輪のつぶつぶとか、ずっぽりとはめられて垂れたお汁まではっきり写ってますよ。どうです?お買い得だと思いますがいかがですかね?」

男は里美が口を開く隙も与えず、聞くに耐えないいかがわしい言葉を楽しそうに早口でまくし立てた。

「バカなこと言わないで!この写真…いったいどこから⁉︎」

「あぁ、申し訳ありませんがそれは企業秘密でございまして。それよりいかがです?お話を聞いていただけるようでしたら、これからすぐにでも伺いますが。」

男はのらりくらりとはぐらかす。先ほどのインターホン越しのにやけた顔が目に浮かび、里美は焦りと苛立ちを募らせた。

「私の写真をどうしようというの?今すぐぜんぶ捨ててください!」

「おやおや、ご立腹のご様子で…。先ほども申し上げた通り、こちらはビジネスとして、是非ともこれを買って頂きたいんですがね。」

「バカじゃないの?ふざけないで!あなたになんの権利があって…買うわけないでしょ!すぐに捨てて!」

「おやぁ、そうですか。仕方ありませんね、では他を当たるとしましょう。そんなこと言って、後悔なさらないように。」

「えっ…?ちょ、ちょっと待って…。」

「これほどの美貌とスタイルなら、他にも買い手はいくらでもいますからねぇ。では、失礼します。」

里美の言葉を無視すると、捨てゼリフとともに唐突に電話を切られてしまった。買い手って…里美は焦った。慌ててかけ直したが、いくらコールしても電話に出ない。やってしまった…。里美は自分の失態に気づいた。相手はこちらの弱みを握っているのだ。怒りの衝動に駆られ、思わず怒鳴り付けてしまったことを後悔した。

(そんな…どうすればいいの…。)

電話番号以外、相手のことはなにも知らない。顔写真も会話の記録もない。警察に行っても自分の裸の写真だけではなにひとつ訴える材料もない。それに、警察に言えば夫にも伝わるだろう。たとえ許してもらえるとしてもやはりそれは避けたかった。あの男の口ぶりはとても冗談で言ってるとは思えない。とにかくあの男に連絡を取るしかない。里美は封筒を握りしめ、部屋に駆け戻った。

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